インタビュー
マレットファン(夢のたね)
ー「こども」と「おとな」の教育支援ー
3月中旬にタイ国認定の教育NGO、“マレットファン(夢のたね)”さん(以下マレットファン)にお邪魔させて頂きました。
マレットファンさんは、タイの格差社会における教育問題の改善に取り組む団体で、「こども」だけでなくこどもに関わる「おとな」の支援も行なっています。保護者や教育関係者を対象としたワークショップ、絵本の広場プロジェクト、さらに日タイ交流プロジェクトを通して、教育を物心両面でサポートする活動を行っています。マレットファンさんは今年で設立5年目を迎えます。
日本人スタッフである、松尾久美(まつお くみ)さんにお話を伺いました。
Q. タイの教育活動を始められたきっかけを聞かせてください。
A. 学生時代に参加した、タイ山村部でのスタディツアーがきっかけでした。当時、自然の中で笑顔あふれる生活をしているタイのこども達と触れ合い、日本の教育現場に窮屈さを感じました。こども達の笑顔を見て、本当の幸せとは何だろうかって考えさせられたんですよね。これを機に、もっとタイの教育について知りたいと感じ、現地NGOの職員として働き始めました。
Q. マレットファン設立前に印象に残る活動があったそうですが、その時のお話を詳しく教えてください。
A. マレットファン設立前に現地NGOの職員として働いていた時、スマトラ沖地震の支援スタッフとして現地に派遣されました。そこの避難所にいるこどものために、臨時の遊び場や図書館を作る活動をしていました。その際、大切なのは単なる物資の支給だけではなく、こども達の居場所作りだと実感しました。この時は災害支援という名目での参加でしたが、教育現場でも同じことが言えます。1つのコミュニティの中で、おとなとこどもが、共に解放され、交流の場を設けることで新たなパワーを作りたいと感じるようになりました。
その後、同じ想いを持つタイ人スタッフのムアイさん、ギップさんの3人でマレットファンを立ち上げました。
Q. マレットファン設立後は、おとなを対象とする研修やワークショップ、えほん展の活動を行ってきたと伺いましたが、現在どのような活動に力を入れていますか?
A. 現在はえほん展の活動を積極的に行っています。(その他の活動はこちらからご覧ください)
タイではこどもの読書率が比較的低く、タイのこどもは本を読むことが嫌いなのではとまで言われている現状があります。本を嫌いなのではなく、本に触れる機会が少ないだけなのではないか、と私は思います。図書館は存在するのに、多くの人の手に届いていないだけなのです。この状況を打破するために、教育に携わる全ての人に向けた読書推進の動きを起こしたいと考え、タイの各地でえほん展を開いています。
例えば、2015年に初めて、バンコク中心部の大型ショッピングモール “Central World” にある公共図書館と共同でえほん展を開きました。そして、タイ北部のチェンライ県でも、政府支援のもと、えほん展を開催することができました。
えほん展では、えほんの魅力をより引き出すために、表紙が見えるようにえほんを設置できる専用の台を導入しています。また、世界の名作を多く取り入れたりもしています。タイには知育用のえほんは多く存在しますが、こどもたちの心に残るものが非常に少ないです。世界中で愛されるえほん、もちろん日本の名作も多くあり、楽しめるえほんを多く取り入れています。
Q. マレットファンの運営に対する想いを聞かせてください。
A. 先ほど話したえほん展や研修などは、国からの支援を元に行っています。運営資金の話につながりますが、マレットファンの資金源は政府や行政からの講師料が大半を占めています。行政主催の教育関係者や保護者を対象にした研修やワークショップで、手軽に作れるおもちゃや遊びのアイデアを伝えています。こどもに楽しい!と感じてもらうにはまずおとなが楽しいと思うものであるべきで、新しいアイデアを伝えることで教育のモチベーションを上げることを目的としています。この参加料が講師料となります。日本から団体を応援いただく会員制度はとっていますが、日本における寄付集めを積極的には行っていません。タイの教育問題はタイ国内で解決、改善していこうとするものであり、タイの教育予算も十分にあります。ですから、その教育予算を適切に活用することが大切だと思います。なので、国からの講師料を頂き活動させてもらっています。
Q. 最後に、これからの目標や松尾さんの想いについてお聞きしたいです。
A. 活動をうまく回し確実な資金を確保できるようになれば、スタディーツアーなどを行いたいです。こどもを取り巻くおとなに広い視野を持ってもらうきっかけをつくり、おとなたちの窮屈な環境を改善することで、こども達に良い流れをもたらすと思っています。将来、自分が関わる範囲の中だけでも“良くなってきたよね”と思える環境づくりをしたいです。社会は決して完璧ではなく不完全だ、ということを教えられるおとな、その中でのびのびと生きることができるこども、どちらの夢も叶えられるような環境を作っていきたいです。
<まとめ>
この度インタビューに協力していただいたマレットファンさん、本当にありがとうございました。松尾さん、ムアイさん、ギップさんの3人で、格差の改善に必要不可欠である教育に取り組む、熱い姿勢が印象的でした。また、おとなに焦点を当てている点も非常に興味深く、単発的にならない環境を作るためにおとなの意識から変えていこうという取り組みは、教育問題に取り組む上で必要不可欠であると感じました。マレットファンさんの想いがこの記事を読んでくださる皆様に伝わり、タイ、そして日本の教育に関する意識について考えるきっかけになれば幸いです。
改めて、快く取材に応じてくださり、またThinkを歓迎してくださったマレットファンさんに深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
マレットファン 団体HP : http://maletfan.org/jp/
Faceboook : https://www.facebook.com/MaletFan/


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2017年3月22日
榮, 佐藤, 平塚